こんにちは。
HotDogのメンバーは最近、知財検定3級に合格し、3級知的財産管理技能士となりました。
あまり聞きなれない資格だとは思うのですが、実は国家資格であり、特許や商標、
そしてクリエイターには馴染み深い著作権にまで絡んだ知的財産を扱うための知識を持っていることを証明できる資格であります。
まぁ簡単にいえば弁理士の子供みたいな感じの資格でしょうか。
僕たちHotDogはボードゲームとしては珍しく特許を取得しているのですが、特許を取得しておきながら、その基礎的で体系的な知識というのはお世辞にも十分とは言えませんでした。
そこで、知財検定を通して、体系的に知財の基礎から応用までを身につけてみようということで勉強がスタートし、およそ2ヶ月ほどの勉強期間を経て無事合格できました。(今は2級に向けて少しずつ勉強を始めています)
今回は、知財検定の資格について掘り下げる、というよりかは、
知財検定を勉強するとボードゲーム制作に関する以下のような知識が体系的に身につくよ!
という立ち位置で、知財検定を紹介し、勧めとしたいと考えています。
ボードゲームを作れば著作権は自動的に与えられる
ボードゲームは創作すれば自動的に著作権は付与され、保護されます。
しかし、ボードゲームという分野は著作権では守りきれない範囲が多いのが辛いところです。
ゲームシステムは著作権で保護されない
アイデアといった形のないものは著作権では保護されません。
ボードゲームの心臓部分であるゲームメカニズムについては著作権では保護されないのです。
保護されるのは形として創作された部分、カードデザインであったり、ロゴであったり、あるいはセリフやテキストといった見た目でわかる部分です。
ですから、ゲーム内容は同じでもガワが変わってしまえば著作権的な観点からは全くの別ゲームとして扱われ、著作権の保護対象ではなくなります。
たまたま似ただけと言われたら何もできない
そして著作権は、たまたま似ただけという言い訳が通じてしまいます。
明確に盗作した証拠を押さえられなければ何もできません。
そしてその証拠を集めるのはクリエイター自身ですので、盗作うんぬんで争おうとしたら大変です。
とまぁ、無償で自動的に付与される便利な著作権ですが、きちんと保護しようとすると役不足感が否めません。
きちんと保護する
著作権では保護しきれないとなれば、次に検討したいのが、産業財産権である、
特許、意匠、商標、実用新案です。
これらの権利は著作権とは違い、自動的には発生しません。
特許庁に対して出願し、登録をお願いしないといけません。もちろんお金もかかりますし、審査落ちすることもあります。
しかしその分、著作権とは違って、「たまたま似ただけ」という言い訳を封じ込めることができます。
特許、意匠、商標などはどこかで聞いたことがあるワードかなとは思うのですが、なんだか小難しそうで抵抗がある人も多いと思います。
これらの中でも比較的とっつきやすく、審査が通りやすいのが商標です。
商標でゲームタイトルを保護する
商標が保護してくる部分は、ゲームタイトルだと考えて良いでしょう。
有名なところでは、オセロとリバーシがわかりやすいでしょうか。
どちらも同じゲームではあるのですが、オセロは株式会社メガハウスが所有する登録商標なため、他社はオセロという名前を使うことはできません。
そのためリバーシと名前を変えて製品化しているわけです。
商標が保護しようとする対象は、その製品、そのゲームが持つブランドや歴史です。
ですので、正直、売れていないゲームに商標をとってもあまり旨味はないのが実情です。
商標は、簡単に言えば、誰も取得していないタイトルならば審査は通ると考えて良いでしょう。
そのため、とりあえず名前だけでも権利化しておきたいというときは良いのかもしれません。
僕はやったことがないのですが、弁理士さんに依頼しなくても、商標だったら独学で取れたりもするらしいので、
そういう意味でも敷居は低いのが商標による保護かなと思います。
意匠でコンポーネントを保護する
意匠とは形のあるものに対して、見た目の部分で権利化できる仕組みです。
ボードゲームの独特なコンポーネントやカードイラストを保護することで、ゲームを保護しようという戦略で使える権利かなと思います。
しかし、具体的な見た目の保護なので、見た目を変えられてしまえば他者に対して権利を主張することはできません。
形あるものなことが条件でもあるので、デジタルゲーム化したときには保護対象にはなりません。
実はHotDogのthreeも弁理士さんからは最初、
「ボードゲームで特許は厳しいから意匠でどうだい?」
とは言われていました。
別に具体的にこのデザインを保護したいわけではないんだよなぁということで、その提案は飲めなかった経緯があります。
特許で発明として保護する
一番ハードルが高いのが特許です。
特許は自然科学的な根拠の中での発明に対して与えられる権利ですので、人為的な取り決めであるゲームシステム、ゲームルールは、やはり権利化できません。
ですので、特殊なギミックを持ったコンポーネントなど、そういった側面から発明として保護していくしかありません。
そしてとても重要なのが発明となるための2つの条件です。
特許に対して興味がない方でもこれはあらかじめ知っておいて損はないと思います。
1. 新規性
1つの条件は新規性です。
今まで見たこともない発明でなくてはいけません。いや、それはわかると思います。
しかし意外なのは、自分が公表してしまっても新規性は失う点です。
例えば、「お?なんか良いアイディア浮かんだ!SNSに投稿してみよう!」なんてことをやるとですね、
その瞬間から新規性を失い、特許を取得することができなくなります。
これは結構大きな罠だと思います。知らないとつい公開してしまいますよね。
HotDogは積極的にSNSをやるメンバーでもなかったので、たまたま公開していませんでしたが、特許を取るまでこの新規性については知りませんでした。
2. 進歩性
2つ目の条件は進歩性です。
簡単にいえば、誰でも思いつくようなことは発明とは言わせないということです。
特によく言われるのが組み合わせでの進歩性の欠如です。
例えば、「ソース焼きそばと塩焼きそばが同時に作れるダブル焼きそばだ!」
という斬新(?)なアイディアがあったとしても、それはただの組み合わせだよね?ってことで進歩性は認められないのです。
このあたりのさじ加減は非常に難しく、弁理士さんとしても「審査しないとわからない」というのが実情っぽくはあります。
ミニ特許的な実用新案で保護する
実用新案という保護方法もあります。
簡単に言えば、ミニ特許、ミニ発明です。
実用新案は形があるものに対して取得でき、また、組み合わせの発明もOK、です。
ダブル焼きそばはもしかしたら実用新案だったらいけるのかもしれません。
そして、審査がない、というシンプルっぷりです。
審査がなくて権利化できるなら良いじゃないか?と思われるかもしれませんが、実は本当は審査があります。
他者に対して権利を主張しようという場面では、技術評価という特許庁による査定を受けなければなりません。
ですので、権利化されたとしても、最大技術評価が認められなければ、他人に対して権利主張できない謎の存在となります。
それがゆえに、実用新案は中途半端であんまり注目されない権利だったりします。
しかし、とりあえず形だけでも権利化できるので、盗作しようとする他者を牽制することには使えたりします。
国際的に保護する
近年、捜索したボードゲームが世界中で遊ばれることも珍しい事例ではなくなってきました。
創作したボードゲームを国際的に保護する方法ももちろん用意されています。
著作権の観点
まず自動発生的な著作権について、これも国際的に自動的に発生します。もう少し突っ込むと条例への加盟国の間では、という感じです。
しかし著作権ですので、これは前述のように、「たまたま似ただけ」は通用してしまうわけです。
特許、意匠、商標、実用新案の観点
注意しないといけないのは、特許庁に出願して、特許や意匠などの産業財産権を取得したからといって、国際的にも保護されるわけではありません。
特許などは国ごとに管理していますので、日本で特許を取ったとしてもその権利は日本の上でしか権利は守られません。
例えば、創作したボードゲームをドイツでも保護したいということであれば、ドイツでも特許を取らないといけないわけです。意匠や商標、実用新案についても同じです。
人気タイトルであれば不正競争防止法も
著作権や産業財産権とは違う角度で、不正競争防止法での保護も考えられます。
要は、あなたの作品と誤認するような作品を他人は作ってはならないという法律です。
特に登録も要らず、著作権同様、自動的に発生する権利です。
ですが、あなたの作品が有名である必要はあります。
独占できることの意味
特許などで保護されると、その技術は特許権者に独占的に利用することが許されます。
独占というワードはポジティブにもネガティブにも捉えられるワードなので、人によってはこれを「ズルい」と感じたりして多少なりとも罪悪感を感じるクリエイターも少なくないのではないでしょうか。
その感覚は人それぞれですが、意外とこのことを知っている人は少ないのではないでしょうか。
それは、「そもそも特許はなぜ独占を許しているのか?」ということです。
特許制度の目的
特許という制度は、「新技術を公開し、産業の発達に寄与する」ことを目的としています。
もし誰かが重要な技術を隠し持っていたとしたらそれこそ独占的になってしまいます。
それをわざわざ広く公開してくれるのであれば限られた期間は保護してあげないとフェアじゃないよなぁ、というのが特許の趣旨だったりします。
さらに、「他人の特許で保護されていない、自分たちが自由に使える全く新しい新技術を発明しないと!」という産業全体の推進力が生まれます。
もし全ての権利がフリー化してしまったら新技術を発明しようという推進力は削がれてしまいます。
特許というのは、作った人を守るという側面ももちろんありますが、もっと大きな目的で言えば、
社会全体の発展のため
に存在しています。
こういう側面での視点を持っていなかった人たちも多いんじゃないかなぁと思います。
どれもコレジャナイ感は否めない
さて、いろいろな権利を紹介していきましたが、一番保護したいゲームシステム、メカニズム、ルールを直接的に保護する手段が不在なため、
なんかコレジャナイ感は否めなかったかなと思います。
とはいえ間接的に、
ゲームルールと直結している発明があれば特許や実用新案、ゲームの世界観を強く主張しているデザインについては意匠などの選択肢はあるかなと思います。
人気タイトルやシリーズであれば商標も十分活用できるでしょう。
知財検定を受けよう
とまぁ以上のようにボードゲームクリエイター向けにゲームの法的保護方法をご紹介していきましたが、
こういった知識が身につくのが知財検定です。
国家資格でもありますし、会社員であればキャリア形成にも一役買うと思います。
覚えることはそこまで多くもないので、興味があれば、僕達と同じく、知的財産管理技能士になりましょう!